私は英語学習や英語教育実践において「やさしい英語の本をたくさん読もう」を1つのスローガンにしています。いわゆる「多読」ですね。Graded Readers(語彙や文法をコントロールした学習者向け読書教材)は、多読の入り口として非常に有効です。
では、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。「英語が読みやすい本って、どうやって『やさしく』なっているのだろう?」
実はこの問いを考えるヒントとしてdime novel(ダイム・ノヴェル)について、今回は述べてみたいと思います。
dime novelとは何か
dime novelは、19世紀後半のアメリカで流行した大衆向けの安価な小説です。
- 価格は10セント(dime)
- 誰でも買える
- 西部劇・探偵・冒険など、娯楽性の高い物語
たとえば、探偵のNick Carterシリーズや、西部の英雄Buffalo Billをモデルにした物語などが人気でした。
主な出版社は Beadle & Adamsで、当時のベストセラー文化を支えた存在です。
なぜ英語学習に関係があるのか
一見すると、「昔の安っぽい娯楽小説」でしかないように思えるかもしれません。しかし、ここに重要なポイントがあります。dime novelはとても読みやすい英語で書かれているのです。
その理由は主に3つあります。
① ストーリーがとにかく面白い
物語の展開が速く、「続きが気になる」構造になっています。これを専門的には narrativity(物語性)
と呼びます。面白いから、読むのが止まらない➡結果として、自然に多読になる
② 文がシンプル
dime novelは難しい文体を目指していません。「短い文」や「直接的な表現」「会話が多い」というのが1つの特徴です。
③ 同じパターンが繰り返される
ストーリーや表現に「型」があります。
・似た表現が何度も出てくる
・読んでいるうちに自然と理解できるようになる
これは語学学習にとって非常に重要です。
Graded Readersとの違いと共通点
ここで、現代のGraded Readersと比べてみましょう。
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読者 |
ネイティブ大衆 |
英語学習者 |
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やさしさ |
自然にやさしい |
設計されたやさしさ |
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目的 |
娯楽 |
学習+娯楽 |
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文体 |
シンプルで反復的 |
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ここで面白いのは次の点です。
●Graded Readersは「やさしくするために作られている」
●dime
novelは「面白さの結果としてやさしくなっている」
英語力を伸ばすうえでのヒント
この違いから、重要なことが見えてきます。「理解しやすいこと」と「読み続けられること」は別かもしれない
Graded Readersは:
- 語彙が制限されている
- 文法が整理されている
★だから理解しやすい
一方、dime novelは:
- ストーリーが強い
- 展開が速い
★だから読み続けられる
英語力を伸ばすには、この両方が必要です。
では、どう活かせばいいのか?英語学習者へのおすすめはシンプルです。
✔ まずはGraded
Readersで「読める感覚」を作る
✔ その後、「面白さ」で読める本に移る
この「面白さ」の方向として、
- やさしいミステリー
- やさしい冒険小説
などは、実は現代版のdime novelに近い存在です。
英語の読書というと、「やさしいか/難しいか」だけで考えがちです。しかし、もう一つ大事な軸があります。それは「読みたくなるかどうか」です。
19世紀のdime novelは、そのことをはっきり教えてくれます。
英語学習においても、「わかる英語 × 面白い物語」
この両方を大切にしていきたいものです。
